ご依頼いただいた手続き:相続まるごとパック
【東京都60代 女性】
夫が亡くなり、不動産・車・借金など、どうしてよいか全くわからず途方にくれました。
そんな時、大変親切に手続を行っていただき、すべて終わることが出来ました。
ありがとうございます。感謝しております。
代表司法書士からの一言
K様、この度は相続まるごとパックのご依頼を頂き、誠にありがとうございます。K様は、弊所のホームページからお問い合わせいただき、無料相談の後、相続手続をまるごと行う「相続まるごとパック」のご依頼をいただきました。
K様の家族構成は、配偶者であるK様、K様の配偶者様のお母様です。お父様は、すでに亡くなっております。
相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
1、相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ相続の「単純承認」
2、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない「相続放棄」
3、被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ「限定承認」
3の限定承認は、実務では税金や手続きの煩雑さからあまり使用しないことが多いです。
本件は、1の単純承認か、2の相続放棄ということになります。
K様は田無市に物件を所有されておりますが、同時に借金(住宅ローンと消費者金融系6社)がありました。
本件では、相続放棄を検討しながら相続手続を行っていく必要があります。
ご依頼を頂きました案件の内容は以下の通りです。
- ①K様の配偶者様が令和3年8月に亡くなった。東京都田無市に居住用の物件を所有しているが、債務もある状況。
- ②債務については、住宅ローン、消費者金融系が複数あり(依頼を受任した時点で、債務額等は特定できず)。
- ③住宅ローンについては、団信にて完済。消費者金融系は調査の結果計6社。
- ④相続人であるK様の配偶者様のお母様について、ご高齢であるため相続放棄を検討。
- ⑤債務調査の結果によっては、K様も相続放棄を検討する必要あり。
本件の論点を簡単に挙げてみましたが、かなり多くの事柄が出てきました。
相続を承認するのか、相続放棄するのか、相続財産の調査とスピードが要求される案件です。
相続放棄については、原則相続を知ってから家庭裁判所に3か月以内に申請を行う必要があります。
過去に、このホームページの法律コラムにて、「それって、本当に「相続放棄」ですか?」というタイトルで書かせて頂きましたが、「相続放棄」と「遺産分割協議で財産をもらわない」ということは、法的には全然違う行為となります。
重複してしまう部分があると思いますが、「相続放棄」と「遺産分割協議で財産をもらわない」ということについても記載させて頂きます。
「相続放棄」
被相続人(亡くなった人)の死亡を知ってから3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述をすること。
家庭裁判所に書類を提出して、家庭裁判所に相続放棄をしたというお墨付き(相続放棄申述受理証明書 OR 相続放棄申述受理通知書)をもらう必要があります。
「遺産分割協議で財産をもらわない」ことを「相続放棄」と言っている、勘違いをされている方が圧倒的に多いですので、注意が必要です!
「相続放棄」と「遺産分割協議で財産をもらわない」ことの違い
「相続放棄」
- 家庭裁判所に対して申述が必要
- 原則、亡くなったことを知ってから3か月以内に手続きをする必要がある
- 相続放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)。(相続分の計算をする際には要注意)
- 同順位の相続人が全員相続放棄をすると、次順位相続人に相続権が動く(子が全員相続放棄→直系血族が全員放棄→兄弟姉妹)
- 一切の相続財産(プラスもマイナスも)を相続することができない(家を相続できないが借金も相続しない)
「遺産分割協議」
- 家庭裁判所等に対して申述は不要
- 原則、いつまでに遺産分割協議をしなければならないという「期限」はない。(法的には期限ないが、税金の関係では期限があるので要注意)
- 遺産分割協議で「プラスの財産をいらない」といっても、債務があれば引き継ぐことになる(債権者との関係があるため、相続人同士で債務の負担者を決定できない)
- 遺産分割協議で相続財産をもらわなくても、相続人であることに変わりはない(相続放棄のように次順位の相続人に相続権はうつらない)(相続分の計算をする際には要注意)
「相続放棄」と「遺産分割協議で財産をもらわないこと」は、法的には全然違います。
一緒の意味で使っていないでしょうか?
家庭裁判所に申述が必要な「相続放棄」ではなく、他の相続人に「遺産をいらない」と伝えているだけ、ということがほとんどです。
借金の方が多かった場合など、「相続放棄」をしたと勘違いして、多額の借金を相続してしまうことになって大問題に発生する可能性があります。
相続人の中に相続放棄をしている人がいる場合、遺産分割協議をする相続人がかわったり、法定相続分の計算方法が変わってきます。
また、相続放棄は、相続財産の「処分行為」をすると、相続放棄をすることができなくなります。
「処分行為」とは、相続財産を売却してしまう、預貯金を使ってしまう、借金を返済する等の行為となります。
本件では、相続財産の調査を行い、総財産はプラスなら相続の承認、マイナスであれば相続放棄を検討しながら進めていく案件です。
本件のようなケースの場合、以下が注意点となります。
- 相続放棄の期限は、原則相続を知った日から3か月以内。
- 相続財産の調査中に、3か月が経過しないように注意(相続財産に調査に時間がかかりそうであれば、家庭裁判所に相続放棄の期間伸長の申立を行う)。
- 相続財産の調査が終わり、方針の決定までは相続財産の処分行為を行わないようにする(本件では、預貯金をおろしたり、借金の返済をすること)。
- 財産調査中、債務の支払いを一旦とめることになるため、金融機関に連絡が必要(相続財産の調査中であることを伝える)。
また、本件では、相続人である被相続人のお母様がご高齢であることから、相続放棄をして次順位の相続人に手続きを任せることも検討しました。
相続の順位については、以下のとおりです。
①相続人の子、配偶者
②相続人の直系血族、配偶者
③相続人の兄弟姉妹、配偶者
同順位の相続人が全員相続放棄をした場合、次順位に相続権がうつっていきます。
本件でいうと、②で直系血族であるお母様が相続放棄した場合、③の相続人の兄弟姉妹に相続権が移っていくわけです。
しかし、相続人の兄弟姉妹の中に、全然連絡を取っていない方がいることが分かりました。
今回の相続手続で久しぶりに連絡をして、兄弟姉妹全員が相続放棄の手続きを取ってくれるとは限りません。
少しでも財産をもらえるのであれば、相続放棄をしないという選択をされる方々もいらっしゃいます。
お母様はご高齢でもありますし、できれば相続放棄をして頂き、相続財産を一切引き継がない方が理想でした(プラスもマイナスも)。
しかし、今回の事情を考慮すると、お母様には相続人として遺産分割協議に参加してもらい、財産をもらわない遺産分割をした方がうまくいくと考えました。
ただ、この選択に問題が無いわけではありません。
上記にも記載をさせて頂きましたが、相続放棄と遺産分割協議には明確な違いがあります。
相続放棄は、はじめから相続人でなかったことになりますので、債務の相続はしません。
遺産分割協議で財産をもらわなかった場合について、プラスの財産は相続しませんが、マイナスの財産は相続してしまう可能性があります。
遺産分割協議だけで、債務の行き先を決定することができないからです。
債務については債権者の存在があります。借金を返してくれる人を勝手に決められても、その方が借金の返済能力があるかどうか、債権者にとっては不明です。借金の相続を遺産分割協議で決定することは基本的にはできません(債権者の合意が必要)。
結果、相続手続としては以下の通りとなりました。
- 相続財産の調査の結果、相続財産はプラス。
- 団信で住宅ローンが無くなったが、消費者金融計6社の借入が残った。
- K様のお給料と被相続人の遺族年金で、残った借金の返済が可能と判断。
- 相続人は、K様とK様の配偶者様のお母様で、K様が全ての相続財産を承継した。
- 任意整理手続きで、5年払いの返済計画を立てた。
- 仮に債務の返済ができなくなってしまった場合、お母様も相続人であるため借金の返済義務が残る。その場合には、相続した田無市の物件を売却して借金の返済にあてることをお母様に説明。
また、弊所の報酬についてですが、本件では借金があったため、預貯金の相続財産金額が弊所の報酬額に満たないケースでした。
(相続財産の預貯金があれば、相続財産の中から弊所の報酬を差し引かせて頂いております。)
債務の返済計画を立てている期間中、借金の返済が一時ストップしますので、その間に弊所の報酬を貯められる期間がありましたので、その間に貯金をして頂くようにお願いしておりました。
本件では、結果、K様のご自宅や日常を守ることができました。相続手続がうまくいったケースだと思います!
ご依頼を頂いてから8か月での手続き完了です。
債務整理の手続きを含めてこの期間であれば、なかなかのスピードで終了したといって良いですね。
同様のケースでお困りの方も、手続きを進められる場合が多々ありますので、まずはご相談してみてくださいね!長年の悩みが解決することがあるかもしれません。
是非一度、無料法律相談からのご利用をお勧めいたします!
経験豊富なスタッフがお待ちしております。