遺産分割の意義
遺産分割は、被相続人の死亡によって共同相続人間の共有になった相続財産を分割し、遺産を各相続人に帰属させ、新たな権利関係を形成することを目的とする手続きです。
遺産分割の効果は
遺産分割をすることによって、共同相続人間で共有状態となっている権利関係が、確定的各相続人に帰属するという効果が発生します。そして、遺産分割の効力は、相続開始時に遡って生じます。ただし、第三者の権利を害することができません。
遺産分割はいつまでに行う必要があるか
民法上は、いつまでにしなければならない、という期限はありません。
しかし、共有はあくまでも臨時的なものであるため、長期間遺産分割をしない状態で放置しておくことは望ましいことではありません。長期間経過することにより相続人が死亡してさらに第二、第三相続が発生していくと、相続人の数が増大し、いっそう遺産分割協議が難しくなるケースが多発しております。
弊所にも、親子3代、4代の相続手続が未了で、その間に何十人も亡くなっている相続手続のご相談がたくさん寄せられています。相続人が数十人にもなり、相続関係説明図は時代劇の巻物のようになります。面識の無い方との遺産分割協議は、当然難航します。高額の費用も発生し、解決までに1年以上かかるケースもたくさんあります。費用や時間がかかっても解決できれば良いですが、最終的に解決できないケースも多いのが現状です。
相続手続を放置することは、次世代に負の遺産を残すことになります。このようなことを防ぐため、現在起きた相続は今解決することを強くお勧めしたいと思います。
遺産分割協議書を使用する場面
法務局に申請する不動産の相続を原因とする所有権移転登記、銀行の預貯金・投資信託の解約払戻・名義変更、証券会社の有価証券の移管・現金化のケース等に、各機関に対して遺産分割協議書を提出いたします。
遺産分割協議は、最終的な相続財産の処分方法を決定するものです。銀行や証券会社等は、相続手続をする際にその金融機関独自の書類の提出を求めてきます。法的には遺産分割協議書で換えられる書類がほとんどですので、しっかりとした遺産分割協議書を作成しておくことで余計な書類の提出を防ぐことが可能となり、手続の簡易・迅速化が可能となります。
最終的なゴールは、相続財産の帰結を確定させて、各相続人に財産を分配することです。そのゴールを見据えた遺産分割協議書を作成するにはコツが必要です。
弊所は司法書士として、不動産登記はもちろん、遺産整理業務で常日頃銀行や証券会社とやり取りをしておりますので、相続手続のノウハウの蓄積があります。
弊所に相続手続をご依頼頂ければ、遺産分割協議書の作成方法について悩む必要はありません。安心して遺産整理業務・遺産分割協議書の作成を進めることができ、簡易・迅速に各相続人に相続財産の分配を終了することが可能です。
相続を原因とする所有権移転登記の節税
数次相続がある場合の中間省略登記 所有権移転登記
親子何代に渡って相続登記をしていない場合、不動産登記の専門家である司法書士に遺産分割協議の作成を含めた相続登記をお任せすることをお勧めいたします。
所有権の登記名義人につき数次に相続が開始した場合、通常は各相続について順次相続登記を申請すべきとされています。しかし、中間の相続が単独相続の場合には、直ちに現在の相続人の名義とする中間省略による相続登記を申請することができます。
登記申請時に、不動産固定資産評価額に応じて登録免許税という税金を納付する必要があります。例えば、固定資産評価額1億円の不動産について、「相続」を原因とする所有権移転登記を申請する際には、登録免許税40万円を納税する必要があります中間省略登記が可能となり、1回分登記申請が不要になるだけで、40万円の節税が可能となります。
中間の相続が「単独相続の場合」とは、以下の3パターンです。
- 中間の相続における相続人が1人だけの場合
- 共同相続であったが他の相続人が相続を放棄して、相続人が1人になった場合
- 共同相続であったが遺産分割・特別受益等で不動産を相続登記するのが1人だけになった場合
遺産分割協議書の作成の際に、あらかじめ中間省略登記が可能であることが把握できていれば、一番効率のよい登記申請方法を考慮した遺産分割協議書を作成することが可能です。複雑な不動産登記申請を見据えた遺産分割協議書の作成が可能なのは、司法書士のみです。
Aの相続財産につき、E・F・Gが相続登記する場合、中間の相続における相続人がDの単独相続となるので、中間の相続登記を省略することができる。
Aの相続財産につき、B・Cが相続放棄、若しくは遺産分割協議で不動産を相続登記するのがDだけになった場合、中間の相続登記を省略することができる。
換価分割について
遺産分割協議に換価分割という方法があります。現物の相続財産を現金に換えて遺産分割することを言います。不動産を換価分割する場合、不動産を売却して、その売却代金から諸経費を差し引いた残額を、法定相続分で分配する方法を取ります。
相続した不動産を売却する際に、一旦相続人に相続登記を申請する必要があります。
以下のような事情がある場合、相続人代表者に登記名義を行い、その後に換価分割することで、登記申請件数を減らすことが可能となる場合があります。是非、弊所に相談をしてみてください。
- 相続人が大人数存在して、不動産売却時に手続が大変
- 相続人に高齢者や体の不自由な方がいて、不動産売却手続に参加ができない
- 相続人が忙しく時間がとれない
- 相続人が遠方に住んでいる
また、国税庁のホームページで、贈与税について以下のような説明があります。換価分割について、しっかりとした遺産分割協議書を作成しておけば、贈与税が問題になることはございません。以下は、遺産分割調停についての照会要旨ですが、遺産分割協議でも同様の結論になると考えられます。
照会要旨
遺産分割の調停により換価分割をすることになりました。
ところで、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後において、換価代金を分配することとしました。
この場合、贈与税の課税が問題になりますか?
回答要旨
共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。
遺産分割協議の中立的調整業務
相続人全員から同意があり、紛争性の恐れがなければ、遺産分割協議の「調整役」として、法律の専門家である司法書士が中立公正な立場で相続人からご意見を伺い、法的な助言を行うことが可能です。
司法書士に遺産分割協議の中立的調整役を頼むメリット
遺産整理業務における司法書士の役割は、特定の依頼人の利益のために活動する者(代理人的役割)ではなく、あくまで相続人に対し公平な立場である者(管理人的役割)です。
司法書士の遺産承継業務は、相続人全員から依頼を受けるため、誰か一人の利益になるようなことはしません。
中立的に、相続人全員のメリットになるように動きます。
紛争性がある相続について弁護士が関わる場合、特定の相続人一人について一人の弁護士が代理人となります。その場合、弁護士は依頼者である特定の相続人に最大のメリットが出るように動きます。基本的に、他の相続人とは対立する関係になります。
司法書士が相続人全員から遺産承継業務を受任し、遺産分割協議の調整役として動き、遺産分割協議がまとまった場合、裁判手続等を行わずに解決できる可能性があるため、親族等と余計な争いが起きにくく、相続手続によって人間関係が壊れることがないというメリットがあります。
また、紛争性がある相続について弁護士に頼んで訴訟等の手続をした場合、各相続人ごとに弁護士費用が発生します。手続の終了まで長期間に及ぶことが多いため、費用が高額になるケースが多くなります。司法書士が遺産分割協議の中立的調整役を務め、相続手続を行うことができた場合、費用が安く済みます。
遺産分割協議において、中立型の調整行為を行う条件
- 特定の相続人の代理人ではなく、中立型調整行為であること
- 各依頼者に自由な決定権があること
- 対立または紛争が生じたときは、調整または調整をするが、調整役の辞任・解任後にはすべての者の代理をしないこと
- 依頼者との関係および事案の内容について重要な情報を開示すること(依頼者間では秘密保持をしないこと)
- 調整役の法的合理性および各依頼者の利害喪失の内容
- 受領する報酬額および支払人について、事前に依頼者全員に説明し、依頼者全員がこれに同意すること
司法書士は、遺産分割協議において特定の相続人の代理人となることはできません。
遺産分割協議において紛争性が生じてしまった場合には、弁護士法第72条違反の可能性がありますので、案件受任中であっても途中で辞任をさせていただく場合があります。
相続税等の税金面について考慮した遺産分割協議書の作成サポートも可
相続税の申告を予定している場合、遺産分割協議書作成に税金面での知識が欠かせないケースがあります。
また、今回の相続だけではなく、将来の相続を想定した相続税節税プランを含めた遺産分割協議書の作成も可能です。
共に税理士の先生の協力が必要不可欠になります。
弊所は、相続税に強い税理士の先生のネットワークがありますので、税理士の先生と共にワンストップで遺産分割協議書の作成を進めていくことが可能となっております。